やっと夏の暑さも和らいで、なんとなく気持ちに余裕ができたような気がするこの季節は、猫と一緒にのんびりと映画や本の世界に浸るのにぴったりではないでしょうか。今回は「猫」が主役、または動物たちとの交流を感じられる作品をいつくかご紹介いたします。
自然の静けさ、あたたかな眼差し、そして少しだけ不思議な感覚――。
猫たちと一緒に、心を旅するようなひとときを過ごしてみませんか?
🎬アニメーション映画編:静かに語りかけてくる、猫たちの旅
映像や音で心に語りかけてくる――そんな余韻のある猫映画を集めました。
セリフのない作品や、少し不思議で温かい物語など、静かな時間にじっくり観たくなる3本をご紹介します。
Flow(ラトビア・フランス・ベルギー制作)
言葉がなくても、こんなにも多くを語ることができる――
洪水によって家を失った黒猫が、ラブラドール・レトリバー、カピバラ、ワオキツネザル、ヘビクイワシといった異種の動物たちと共に、漂流の旅に出るノンバーバル・アニメーションです。
この映画にはセリフもナレーションもありません。けれど、繊細な動き、色彩の移り変わり、音楽と沈黙が織りなすリズムのなかに、驚くほど豊かな感情の流れがあります。
ただ「かわいい」では終わらない、むしろその奥にある自然災害、生と死、助け合い、孤独と希望――そうした大きなテーマが、観る人の心にゆっくりと沁み込んできます。
「この場面にはこういう意味があったのか」「これは心情の変化を表しているのか」など、観るたびに感じるものが増えていく作品だと思います。
秋の夜長、静かな空気の中で観るとより深く作品と向き合えるはず。
化け猫あんずちゃん(日本・フランス合作)
30年以上も生きたことで人間の言葉を話せる化け猫となったあんずちゃんと、父親を探しにやってきた11歳の少女かりんの奇妙な共同生活を描いた いましろたかし原作漫画のアニメーション映画。
ロトスコープという実写映像を元にアニメーション化する技法が使われていて、動きが生々しくリアルです。主人公あんずちゃんの動きと声は森山未來さん、少女かりん役は五藤希愛さんが担当されています。声はアフレコではなく、実写撮影時のものがそのまま使われているそうですよ。
あんずちゃんのキュートな外見と、おっとりしていておじさん然としたちょっと頼りないキャラクターは見ていて癒やされる反面、描かれるテーマは意外としっかり。
家族とのつながりや他者との関係の再構築といった重みのある内容を、優しいタッチで包んでくれる作品です。
アニメーションならではのビジュアルの美しさ、独特の世界観が魅力です。
野生の島のロズ(原題:The Wild Robot 製作:アメリカ合衆国)
猫ではありませんが、“孤高でやさしい存在”が物語の中心にいるロボットアニメ。ピーター・ブラウンによる児童文学が原作です。
ある日、無人島に打ち上げられたロボット・ロズが、そこに暮らす動物たちと心を通わせながら生きていく姿を描きます。
最初は「ただの機械」として恐れられていたロズが、雁の卵を孵化させたことからひな鳥を育てたり、動物たちに子育てを手伝ってもらったり、コミュニケーションを重ねる中で少しずつ信頼を得ていく――その過程がとても丁寧に描かれていて、深い満足感をもたらしてくれます。
自然の中で過ごすこと、誰かとつながることの大切さをやわらかく思い出させてくれる作品です。
📖本・小説編:猫と人のあいだに生まれる、静かな物語
短編中心で読みやすいもの、どこから読んでも楽しめるアンソロジー、猫との出会いが心を動かす静かなストーリーを選びました。まとまった時間がなくても、少しずつ読み進められるのが魅力です。
カフェかもめ亭 猫たちのいる時間(村山早紀)
港町にたたずむ小さなカフェ「かもめ亭」。ここには、いつのまにか猫が集まり、そして人もまた、心に何かを抱えて集まってきます。
カフェのメニューとともに、猫がそっと寄り添うような短編が連なっていて、読者はそれぞれの“時間”に立ち会うことができます。
どの物語も優しく、少し切なく、そしてどこか幻想的。
猫は話すわけでも、派手な行動をするわけでもないけれど、登場人物のそばに寄り添い、静かに物語を導いてくれる存在です。
まるで波の音が聞こえてくるような、静かな午後にぴったりの1冊。
1話ごとに区切られているので、のんびり読書にも最適です。
猫はわかっている(文春文庫・アンソロジー)
猫と人との関係を、実力派作家たちがさまざまな角度から描いた短編集。
村山由佳、有栖川有栖、阿部智里、望月麻衣など多彩な顔ぶれによる作品は、ミステリー、幻想譚、現代ドラマとバリエーションも豊か。
一匹の猫が人の運命を変えたり、言葉にならない想いを受け取ったり――猫という存在がもつ不思議な力に、読むたびに心を動かされます。
全体に静かで落ち着いたトーンながら、どの話も印象深く、読後にはそっとため息が出るような余韻が。猫を「飼う」のではなく、「出会う」ものとして描いているのも印象的です。
どこから読んでもよくて、どれも“猫の気配”が確かに残る。読書好きの猫派にはぜひ手に取ってほしい一冊です。
📙漫画編:猫と過ごす、やさしい時間の記録
日常の中に猫がいる――それだけで心がふっと軽くなる、そんな作品たち。
癒し系から少し切ないものまで、ゆっくりのんびり楽しみたい漫画を集めました。
どれも猫の存在感がじんわりと沁みてきます。
夜廻り猫(深谷かほる)
SNS発で人気を集めた、夜の町を歩く猫・遠藤平蔵の物語。
泣いている人がいると現れて、静かに話を聞いてくれる――そんな「夜廻り猫」が、ひとりひとりの小さな悩みに耳を傾けていきます。
セリフは少なめで、絵と間で読ませるタイプの作品なので、読む側の気持ちがそのまま重なりやすい。
忙しい日常の中で見過ごしていた「小さな心の揺れ」を、そっとすくい上げてくれます。
ねことじいちゃん(ねこまき)
島で猫と一緒に暮らすおじいちゃん・大吉の日常を描いた、穏やかでユーモラスな作品。
舞台は、自然豊かな離島。そこにたくさんの猫たちと、のんびりした住人たちが共に暮らしています。
ちょっとした出来事が、時間をかけて心を動かす。
日々の小さな発見や気づきが丁寧に描かれていて、読むたびに「丁寧に暮らすこと」の大切さを思い出させてくれます。
猫のお寺の知恩さん(オジロマコト)
遠縁を頼って田舎で下宿することにした男子高校生・源と、はとこのお姉さん・知恩さん、そして大勢の猫たちの共同生活を描いた青春スローライフ。
猫はもちろん、季節の描写もとても美しく、“日本の情景”がたっぷり詰まっています。
知恩さんのふんわりしたキャラクターと、猫たちの自由気ままさが絶妙に混ざり合って、ページをめくるたびに肩の力がふっと抜ける作品です。
猫たちは、いつも静かにそこにいてくれる存在です。
そして気づけば、こちらの心の奥にそっと寄り添ってくれている。そんな“猫のいる物語”は、秋のゆるやかな時間ととても相性がいいのかもしれません。
猫たちと一緒に、いつもより少しだけ心をゆるめて。静かで、やさしい物語の世界に出かけてみてはいかがでしょうか。



