今年もノーベル賞が発表されましたね!
日本人の受賞が話題になるたびに、世界の研究者たちの情熱やユーモアを感じます。
そしてもうひとつ、日本ではすっかりおなじみとなったのが「イグノーベル賞」。なんと日本人の受賞は2025年で19年連続なんだそう。
そんなユーモラスな研究の数々の中で、ひときわ猫好きの心をくすぐったのが、2017年に話題をさらった「猫は液体」という研究。
ご存じの方も多いこの名作を改めておさらいしてみたいと思います。思わず「うちの子も液体かも?」と感じる、もふもふ流体の世界へ――どうぞお付き合いください。
🧪 まずはおさらい:「猫は液体」研究とは?
2017年のイグノーベル物理学賞を受賞したのは、フランスの物理学者
マルク=アントワーヌ・ファルデン(Marc-Antoine Fardin)氏。
研究テーマは なんと「猫は液体なのか?」(On the Rheology of Cats)
この一見ジョークのような研究、実は流体力学(レオロジー)の観点から真面目に分析されています。ファルデン氏は、猫が箱や洗面器、花瓶など、どんな容器にもぴったり収まる姿を観察し、
「これは固体では説明できない!」と考えたのです。
😂 イグノーベル賞とは?
イグノーベル賞は「人々を笑わせ、そして考えさせる研究」に贈られる賞。
授賞式ではノーベル賞受賞者たちがプレゼンターを務めるというユーモラスなイベントで、
研究者本人もコスプレして登場するのがお決まり。
ファルデン氏は猫耳をつけて登場し、“猫は流れる”を証明したプレゼンで会場を爆笑に包みました。(ちなみに、受賞トロフィーは紙でできています。)
🐾 “液体猫”の定義をガチで考える
彼が出した結論はシンプル。
「猫は、時間のスケールによっては液体である」
・・・と、いきなり言われてもピンと来ませんよね。
ここで登場するのが、物理学の一分野である「レオロジー(rheology)」という考え方です。
レオロジーとは、「物質がどんな条件で流れるか」「どれくらいの力で変形するか」を研究する学問。ハチミツやスライムのように、固体と液体の中間みたいな性質を持つものを分析するのに使われます。
では、猫の場合はどうでしょう?
猫は短い時間で見れば、きちんと形を保っている――つまり固体。
けれど、長い時間をかけて観察すると、体をゆっくりと変形させ、箱やボウルなど、あらゆる容器の形にぴたりとフィットしてしまう。この“時間による変形”の度合いをレオロジーでは「粘弾性(viscoelasticity)」と呼びます。つまり、猫は粘弾性体――「柔らかいけれど一定の形も保てる物質」なんです。
しかも猫の体の構造自体が、この“液体的性質”を支えています。猫は鎖骨(肩の骨)が他の哺乳類より小さく、筋肉と靭帯でゆるくつながっているため、体をぐにゃりとねじったり、狭い隙間をすり抜けたりできるのです。まさに「構造的に流動性が高い動物」。
つまり――猫は物理的にも生物学的にも、液体の条件をほぼ満たしている!
猫がカゴの中でとろけるように眠る姿、あれはただのリラックスではなく、科学的に見れば“流動的安定状態”と呼べるのかもしれません。
・・・なんて言うとちょっと難しそうですが、要するに「うちの猫、やっぱり液体だった」ってことです。

📸 ネット発、科学界へ――研究のきっかけ
この研究のインスピレーション源は、インターネットにあふれる「#liquidcat」写真。
猫たちがグラスや花瓶に入り込む画像を見て、ファルデン氏は思いました。
「これは科学的に説明できるのでは?」
そして彼は本気で計算を始め、「猫の流動性を測る尺度(viscoelasticity)」まで論文で提案。しかもこの研究、学術誌『Rheology Bulletin』にちゃんと掲載されています。
ジョークどころか、立派な“猫物理学”!
🌍 実はまだある!猫にまつわる珍研究たち
🐈 東京大学「猫は自分の名前を聞き分ける」研究(2019)
猫に複数の単語を聞かせ、自分の名前のときだけ耳を動かす・尻尾を振るなどの反応を確認。
→ つまり、あの「聞こえないフリ」は知っててやってる(!?)説が濃厚。
🐾 ジョージア工科大学「猫の舌は最強ブラシ」研究(2018)
猫の舌の表面には小さな“かぎ爪”のような突起があり、毛の奥まで入り込んで汚れを取ることが判明。
→ その構造をもとに、猫舌ブラシのプロトタイプも開発されています。
📦 “見えない箱”現象を検証(2021)
SNSで話題になった「床にテープで描いた四角にも猫が入る」現象を国際チームが検証。
→ 猫は“囲まれる安心感”を感じるため、線でも箱と認識するらしい。
✨ おわりに:猫は流体、心は気まぐれ
猫の科学は、まだまだ奥が深い!
「猫は液体」研究は、ユーモラスに見えて、「身近な不思議を科学の目で見てみよう」という大切なメッセージを持っています。猫のしなやかさ、気まぐれさ、そして予測不能な行動――それらを観察しているうちに、科学者も人間も、ちょっと柔らかくなれるのかもしれませんね。
あなたの家の猫も、もしかしたら新たな「液体」現象を見せてくれるかも。
箱、洗面器、レジ袋・・・どんな形にもフィットする柔らかボディ。ぜひ“液体モード”の瞬間をカメラに収めて、#liquidcat の世界へ!


